古き良き伝統 (阪急の提督 山本銀作 談話)
昔、恐らく昭和一桁以前の古き良き時代の日本海軍では、「ユーモアを解さない者に海軍士官たる資格は無い」と教えられていたそうです。
戦争中は余裕が無くなったのか随分酷いことになっていたようですが、こういった伝統は今も生きているのかもしれない。 今回はそういう話です。 今を去ること7年前、2000年の7月4日。この日はアメリカ合衆国の独立記念日で、20世紀最後の独立記念日を祝う為にニューヨーク港で洋上式典が行われました。
世界各国から170隻の帆船と70隻の海軍艦艇が参列し、
日本からは幹部候補生の遠洋航海に出ていた海上自衛隊の練習艦隊(練習艦「かしま」、「ゆうぎり」の2隻)が参加していました。 その翌日、ニューヨーク港の岸壁に停泊していた「かしま」の横で、イギリスが誇る豪華客船「クイーン・エリザベス2」が岸壁に接岸しようとしていました。
世界一周クルーズの途中、独立記念日に沸くニューヨークに寄港したものです。
ところが、7万トンの巨体がタグボートに押されている最中、ハドソン川の流れに押されて「かしま」の艦首に接触してしまいます。 「かしま」の被害は大した事が無く、パイプが曲がり塗装が剥げた程度だったそうですが、
何にせよ停泊中の船に当てたというのは大失態ですし、しかも相手は一国の軍艦、 しかも練習艦隊旗艦である訳です。 練習艦隊というのは将来の海軍を担う士官候補生を育てるものであり、小なりといえどもその格式は高い、というのが世界での共通認識です。
着岸した「クイーン・エリザベス2」からは早速、船長のメッセージを携えた機関長と一等航海士が「かしま」にお詫びに出向きました。 出迎えたのは練習艦隊司令官吉川榮治海将補と「かしま」艦長上田勝恵一等海佐。
丁重に謝罪する「クイーン・エリザベス2」の二人に対し、上田艦長はこう返しました。 「被害は極めて軽微であり、こちらはまったく気にしていません。
むしろ、我々は女王陛下にキスされたことを非常に光栄に思います」 客船が軍艦に接触した、というシリアスな場面でしたが、上田艦長の小粋な発言で全ては丸く収まりました。
このことはたちまち式典に集まっていた世界中の船乗りたちに広まり、大変な評判を博したそうです。
咄嗟にこういう事を言って場を収めるセンスというのは非常に得難いものだと思いますが、
伝統としてこういうものが受け継がれているのだとすれば大事にして欲しいものです。
教官殿 月曜日 横浜で 葬儀 が入りましたため 訓練は不参加で在ります((+_+))