”多聞言葉”シリーズ(クハ‐47)
実践事例
新しいことにチャレンジし、それを成し遂げようとするときには数え切れないほどの失敗を重ねる必要がある。折れそうになる気持ちに鞭を打ちながら踏みとどまり、前へ進むのは難儀なことだ・・・。どれだけのハードルを越えれば、到達点にたどり着くのか、イメージが湧かず、気が遠くなるほど難しく感じるときもある。
そんな中で、全体の構図やパターンをとらえ、いくつもの“実践事例”を積み重ねながら、現状打開の起爆剤となる人たちが、少数ではあるが、やがて出てくる。いわゆる、先駆者と呼ばれる人たちだ。
しかし、風穴があき、新市場が生まれたとしても、それだけでは不十分である。成長市場へと発展していくためには、市場の原理が働く必要があるし、そのためには一定以上の普及を図る努力が、さらに必要となる。
新市場の価値に気づき、「やってみよう!」という心意気のある人たちを、事業機会溢れるチャレンジゾーンに誘い、手を組むことだ。つまり、“実践事例”を惜しげもなくすべてオープンにして、協働の場をつくりあげるのが肝要だ。そうすると、もっと多くの“実践事例”がスピーディーに積み上がってきて、気づきの輪が広がる。
私たちは、「実物を自分の目で確かめた!」「他の人にできたのなら、自分にもできるだろう・・・」と思えば、自らの想像の翼を広げ、「やってみよう!」という気持ちになるものだ。“実践事例”には、そんな効用があるのだと思う。
ただ、問題が一つある。“実践事例”を手にしたからといって、すべての人が成功するとは限らないのである。なぜだろうか?
“実践事例”をうまく活用するためには、それが「仮説〜実践〜検証」という経営サイクルの循環過程から生まれたものであるという認識が大事だ。つまり、結果だけをハウツー的に捉えるのではなく、全体の流れとして観るべきである。
仮説とは、目的と手段という全体構図のパターンである。実践とは、様々な関係性のあり様によって変化するプロセスであることも観察しておく必要があるだろう。そして、検証は次の仮説にどう反映されたのか・・・。そう、全体の流れとして捉える。
そのためにも、多くの“実践事例”を積み上げ、できれば一つひとつの事例をグループ討議しながら、お互いの理解を深め、共有化できていけば、貢献の輪が広がっていくに相違ない。
「やってみよう!」という心意気のある人たちで、まずは協働の場をつくることだ。
(H26.12.15)