“多聞言葉”シリーズ(クハ‐44)
機会損失
“機会損失”とは、「ある選択したとき、他の選択した場合と比べたときの損失」あるいは「利益を上げるチャンスがあるのに、何もしないことによって生じる損失」だと定義しておこう。要するに、「儲け損ね」、「無駄」ともいえよう。
「経営の現場では、つねに、どこかで“機会損失”が生じている」といっても決して過言ではない。
売上目標に対して、達成率が低い・・・。同業他社と比べて利益率が低い・・・。人件費が高い割には、生産性が思ったように上がっていかない・・・。本来なら、もっと儲けていてもおかしくないのに、「儲け損ね」や「無駄」があるのだ。
今ふっと、ある人物の顔が浮かんだ・・・。創業以来18年間ずっと赤字だったハウステンボスを、たった一年で黒字化した澤田秀雄氏だ。氏が再生案件を引き受けて、まず行うことは、『2割の増収、2割の経費カット』の目標設定だという。なぜ、氏の顔が浮かんだかというと、組織の中で日常的に起きている“機会損失”を徹底して削減しようというのが、その意味の本質だと気づいたからだ。
広大な敷地内を隈なく見て廻り、いろいろな施設、顧客の表情、従業員の働く姿勢などから、「儲け損ね」や「無駄」を見つけ、改革を断行していったのだと感じた。どうしても削れない経費があれば、「1・2倍速く動く」ことを従業員に求めたという。これらはまさに、“機会損失”削減の真髄である。
“機会損失”とは、人間の意識がつくり出すものである。ゆえに、意識改革ができない人は、自らが発生させている“機会損失”に、いつまで経っても気づくことはできないだろう。
自分の仕事の本質を忘れ、雑務にばかり気がいっている人・・・、部下に任せれば済む仕事を抱え込んでしまう上司・・・、ダラダラとした仕事ぶり、内製にすべきか、アウトソーシングにすべきかの判断・・・、製販分離の考え方・・・、優先順位を間違えた顧客への対応、指示待ち族のロスタイム・・・、バランスシート上の無駄な資産・・・、そして費用対効果・・・。思いついたまま、並べてみたが、“機会損失”だらけである。
まさに、経営とは“機会損失”との戦いだ。あるべき姿を描き、目標設定したそのときから、すでに“機会損失”が生じているのである。その存在をつねに意識し、削減の努力を怠らないことだ。
日常的に「仮説〜実践〜検証」を繰り返し、日々革新を心がけることが肝心だ。
(H26.11.24)