”多聞言葉”シリーズ(クハ‐23)
段取り
仕事の手離れが悪い人がいる。今の時代、スピードが命であるから致命的な欠陥だと考えた方がいい。
いつも仕事を抱え込んでしまい、バタバタしている。やっと手離れできたかと思うと、すでに賞味期限切れとなっており、クレームになってしまうこともある。
何が原因か?一言でいうと、“段取り”の拙さである。“段取り”とは、ゴールからの逆算である。つまり、先読みをして、事がスムーズに運ぶように準備や手順を整えることである。「“段取り”上手な人は、仕事上手である」という言葉がある。まさにその通りで、次の手順を心得ている。
Step1 仕事の“目的”を明確にする(何のために!そして成果と期限)
Step2 達成のための“手段と方法”をストーリー化する(複数のシナリオを準備)
Step3 事前準備を整える(関係者への根回し、道具の選択など)
“段取り”とは、仮説思考の実践だといえる。「仮説〜実践〜検証」のサイクルを繰り返すことによって、“段取り”の「勝ちパターン」が身につくといってもよい。肝心なのは検証によるフィードバック機能である。そのためには、検証可能な仕組みをつくって置くことだ。つまり、プロセスの記録である。
さて、仕事の手離れをつねに意識して仕事をしている人がいる。経営者タイプの人は概ねそうである。手離れには、二つの方法がある。一つは、仕事をさっさと片付けることである。もう一つは、仕事を他人に任せてしまうことである。
ベテランであればあるほど、仕事を他人に任せるのはそう簡単なことではない。なぜならば、自分のイメージ通りの成果を出してもらわないと困るからだ。丸投げしていたら、「無責任だ!」と批判される。
ただ、今やっている仕事がこれから先もずっと自分の仕事だと思っている人がいるとすれば、その人は成長を考えていない人だと思う。成長を考えているとすれば、いつ手離れをさせるかを考えながら仕事をしているはずである。
「いつ、誰に、どのような状況をつくりだせば、手離れできるのか」を考えながら仕事をする。これがまさに“段取り”なのである。そのためには、つねに自分の仕事を言語概念化し、分かるように説明できるようにしておく必要がある。もちろん、手離れとは内部の誰かに仕事を譲るというだけではなく、顧客との関係性の質を変える、すなわち契約内容のレベルを上げることによっても可能になる。
人を育て(任せる)、未来の仕事を創っていくためには、“段取り”する力が求められるのである。
(H26.6.23)