”多聞言葉”シリーズ(キハ‐56)
考え抜く力
自分の頭で“考え抜く力”、そんな思考力が求められている。
その背景には、パラダイムシフト(paradigm shift)がある。過去の成功体験であるハウツーが通用しない時代なのである。
経営の神様・ドラッカーが『断絶の時代(THE AGE OF DISCONTINUITY)』を著したのが、小生が学生の頃だから、もう40年以上も前(1969年)になるが、今まさに私たちは、その非連続性の中で生きている。
このドラッカーの卓越した先見性は、どこから生まれるのか?いつも不思議に思っていたが・・・。一言でいうと、“考え抜く力”であろう。
ドラッカーには数々の名言があるが、次の二つのフレーズは経営計画のつくり方にパラダイムチェンジに値する気づきを与えてくれた。
「未来を予測しようとすると罠にはまる」
「変化をマネジメントする最善の方法は、自ら変化をつくりだすことである」
過去のデータを分析して、予測するような計画をつくっても徒労に終わる。そうでなくて、すでに起きている変化とその影響を洞察し、自らの手で未来を創造するような計画をつくるべきだと・・・・・。これは、まさに“考え抜く力”が問われる、のである。
目指すべき到達点(ゴール)だって一つとは限らない。ゴールへのプロセスだっていろいろある。その一つひとつをどれだけ想定し、その正当性や可能性を“考え抜く”ことができるのか。
事業を成功させている人は、とに角、よく考える人が多い。ゴールへのパターンを何通りも、納得いくまで想い描く。自分の頭でしっかりと理解できない限り、妥協をしないのである。
孫正義さんの「事業計画は100パターンつくれ!」も有名だし、ディスカッションが始まったら深夜にも及ぶらしい。渡邉美樹さんは、ワタミを上場するときの事業計画は毎日の如くつくり直したという。以前に、流行語大賞になった「想定の範囲内」という言葉も強く印象に残っている。他にも、ハウステンボスを再建している澤田秀雄さんも、なかなかのしぶとい思考力をもった人だと思う。
大胆な決断と行動の裏には、強かでかつしなやかな思考力がある。やはり、“考え抜く力”が備わっている証拠だ。そして、衆知を集める術を心得ている。だからこそ、“考え抜く力”さらに強まるのであろう。
さらに加えていうと、“考え抜く力”をもっている人には、共感性の高い発信力がある。だから、“考え抜く”ために必要な材料もいっぱい集まってくる・・・・・。
(H25.10.21)