”多聞言葉”シリーズ(探喫20‐44)
個人的には
『“個人的には”・・・。わざわざそう断って発言する人がやけに多いように感じる。気のせいだろうか。「私はこう思う」と単に言えばいいのに、なぜかこの表現がよく使われる』と・・・。
取り立てて言うほど気にはしてなかったが、確かに言われてみると、「“個人的には”・・・」という発言を耳にすることが多いように感じる。
“個人的には”という言葉の意味が気になって、調べてみると、「社会的な集団に対する各々の人に関すること」「公的なものと異なる」「個人を主体とするさま。個人に関するさま」とある。
何かの組織を代表して発言する立場でない限り、個人としての発言をしているのであるから、改めて言うまでもなく個人的なものである。それをなぜ、敢えて「“個人的には・・・”」というのか?
その使い方には、三通りの状況が考えられる。
- 一つは、自信の無さ。自分の意見に自信を持てない背景から保身・保険のために使う。つまり、「逃げ道」として使う。
- もう一つは、他の人への気遣い。相手の気に障るかもしれないが、これだけは言っておこうというときに使う。
- さらに、場の活性化。他の人の意見を引き出し、場を活性化させるためにさりげなく使う。
日本の企業では同調圧力が強いので、その圧力にたえる「逃げ道」が必要となり、「個人的には・・・」という表現になってしまっているのではないかと指摘している。
ここまで書いているうちに、ふと、「自分はどうだろう?」と思って考えてみたが、ほとんど「個人的には・・・」という言葉をつかっていないことに気づいた。なぜか?一言でいうと、「個人=全体」という自覚であろう。自惚れではなく、立場上、無意識のうちにそうなってしまっているのかも知れない・・・。
今後、「個人的には・・・」という言葉を使うことがあったとしても、①ではなく、②あるいは③の状況で、使いたいと思う。「写は此の道譲らじ(彩雲)」