”多聞言葉”シリーズ(探喫08‐39)
水
「上善如水(上善は、水の如し)」は、老子の教えである。老子は、“水”に最上の生き方を感じとったようである。
「水善く万物を利して争わず。衆人の悪む所に処る。故に道に近し」(老子)。“水”はあらゆるものに分け隔てなく恵みをもたらし、他と争って傷つけたりしない。また、“水”は高いところから低いところへ流れ、低いところに留まろうとする謙虚さがある・・・。
老子には「無為自然」という有名な言葉もあるが、“水”のようにしなやかで、謙虚さがあれば、他と争わなくても生きていける、そんな生き方を理想としたのであろう。
豊臣秀吉の軍師としても有名な、黒田官兵衛(如水)も“水”に生き方を学んだ一人である。「水五訓」として、次のような教えを残している。
一、自ら活動して他を動かしむるは水なり
一、障害にあい激しくその勢力を百倍にし得るは水なり
一、常に己の進路を求めて止まざるは水なり
一、自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るるは水なり
一、洋々として大洋を充たし発しては蒸気となり雲となり雨となり雪と変じ霰(あられ)と化し凝(ぎょう)しては玲瓏(れいろう)たる鏡となりたえるも其(その)性を失はざる
は水なり。
① 率先垂範、② 精神力の強さ、③ 向上心の大きさ、④ 器・度量の大きさ、⑤ 臨機応変な柔軟性・・・。いずれを取っても、経営者にとって欠くことができない大切
な資質である。
もうだいぶ前の話だが、ある人から、「水五訓(ごくん)」は「水五訓(ゴックン)」と覚えたらよいと、教えてもらったことがある。そうすると、水を飲むたびに思い出すことができるので、その考えが習慣化できるというのだ。(さすが、機智に富んだ人は、発想がユニークだ)。
考えてみると、“水”だけではない。私たちは自然の中から様々なことを学び、恩恵を受けている。創作活動をしている人たちは、芸術にしても、何らかのツールなどにしても、自然からインスプレーションを得て、デザイン化し、形にしている。
都会と田舎の二極化が進む中、田舎の優位性はなんといっても自然環境の豊かさであろう。老後の人生を田舎で過ごし、自然と共生できるようなライフ・スタイルを身につけることができたら、どんなに創造的な余生を迎えることができるだろうか・・・。
ずっと温め続けている『農業城下町構想』は、まさに、晴耕雨読の人生、自然との共生から学ぶ、豊かな生き方ではないだろうか。
(H30.11.12)
”多聞言葉”シリーズ(探喫08‐44)
危機意識
多聞式目標管理をやっていると、自ら掲げた目標であるにも関わらず、その達成の度合いに相当の個人差が出てくる・・・。その差が、なぜ生じるのか?気になるところである。
なぜ、達成度合いに差が生じるのか?
目標の立て方や手段・方法の拙さなど原因があると思うが、要は目標達成に対する考え方や習慣を身につけているかどうかであろう。その考え方や習慣において、最も重要なことの一つとして“危機意識”を挙げることができよう。
なぜなら、目標とは次のように定義することができる。
「あるべき姿(理想)-現状」との差(=リスク、問題)を埋めること。つまり、その差を埋めるために何をなすべきかを考えて、具体化したものを目標という。
このように目標を定義すると、目標が未達成であるということは、「リスク、問題」を放置したままの状態にあることを意味し、極めて危機的な状況にあるといえよう。その危機をしっかりと認識し、それと向き合う、健全な“危機意識”が大切である。
先だっての、目標達成率が極めて低い者との対話である。
「なぜ、こんなに達成率が低いのか?」、暫し考えて「決めたことを実行しなかったから・・・」 「なぜ、実行しなかったのか?」 「他にやる仕事ができて、優先順位を怠ってしまった・・・」 「じゃ、優先順位を怠らなかったら、上手くいったのか?」 「・・・・・」沈黙が続く。
目標に対する健全な危機意識の欠如が、「仮説~実践~検証」という経営プロセスの各段階における詰めを曖昧にしてしまっている。つまり、目標管理に対する考え方や習慣を身につける努力を怠り、無価値な仕事ぶり、生き方になってしまっている。
かつて、ドラッガーは『哲学という言葉を安易に使いたくないが、自己管理による目標管理こそ経営の哲学たるべきものである』という名言を残したが、肝に銘じている言葉の一つである。
目標とは、他人から課せられたノルマではない。自分の人生を豊かで、楽しくするために立てるものである。つまり、自分の生き方を考えることでもあるのだ。そのように考えると、目標達成に対する考え方や習慣を身につけることがいかに大事であるかが分かると思う。
若い頃の教訓、「有頂天になっていると、思わぬ罠に嵌まるぞ・・・」 「傲慢や慢心ほど、危険なことはない。自重を怠るな!」と。
ハザードラインを予め定め、日頃から健全な“危機意識”を培っていきたいと思う。
(H30.12.17)