”多聞言葉”シリーズ(探喫20‐45)
未来進行形
今、『アメーバ経営』(稲盛和夫 著)を改めて熟読させてもらっている。
その中に、「能力を“未来進行形”でとらえる」というテーマがあり、稲盛さんらしい考え方だと思ったので紹介したい。
京セラを創業して間もない頃で、稲盛さん自らが何とか受注を増やしたいという一心で客先へ売り込みに行っていた・・・。その頃の京セラは無名の零細企業だったから、大手が断った難しい、面倒な製品の依頼しかなかったらしい。
難しい、面倒だからといって、それを断ったら、会社はやっていけない。そこで、稲盛さんは、たとえその時点の技術ではできない製品でも「できます」と言って受注をしてきたのだという。
当然、会社に帰り、技術者たちに話をすると、決まって「とても無理ですよ」と言い出す者が出てきて、みんながやる気を失いかけることもあったらしい。
そのとき稲盛さんは「できると嘘をついてきた注文でも、決して嘘にはしたくない。懸命に努力して完成させれば、嘘をついたことにはならないのだ。納期まで必死に頑張り、製品を完成させよう」と説いたそうだ。
今の時点で、どんな難しい仕事であっても、自分たちの能力を“未来進行形”でとらえてチャレンジし、誰にも負けない努力をすれば、何とかなるものである。京セラは、そうやって大きな飛躍を遂げてきたのだと思う。
思うに、小生にも、“未来進行形”のエチケットラヴェルがある。
紙こより画家の駆け出しのド素人だった頃、ギャラリ-南蛮で展示会をして、実演会や作品を展示してたのであるが、一日目が終わる頃に友人のソムリエが訪ねて来た、ひととうり見回した後最後に一言、「これム-トンのエチケット狙いませんか?」と訊ねられた。
すると
「わかりました。少し、時間を頂けますか?その件について調べた上で、小生の夢としてやっていきたい。」といって、即座に答えていたのである。
後で考えると、すぐに絶対無理ではないかと思い、本屋さんに駆け込み、関連の本を2、3冊購入して研究する。そして、朝一番ソムリエに電話をし、あの五大シャト-、ム-トンのエチケットに描けるにはどうすればよいのでしょう。と聞いたときソムリエは、「それは絵を続けることです。やめないことです!」といって頂いたものだ。
“未来進行形”の夢をもって、一番得したのは私だったと思う。新たな知識や経験を増やすことができたし、おかげで紙こより画家を続けることができたのである。
稲盛フィロソフィの一片に触れたような気がして、得した気分である。
(R2.11.30)